2017年 07月 14日
無銭飲食の男 |
それは37年前のこと。
昭和55年春、京都市内署から京都府北部のF署に昇任配置となった。
昭和55年春、京都市内署から京都府北部のF署に昇任配置となった。
比較的、犯罪も今より少なく署員も100名余りだったように思う。
地元紙の力が強く、その紙面は相当の影響力があった。
その頃、衆参両議院選挙などがあり多忙を極めていた。
白いスーツの男が市内のスナック等で無銭飲食を連続犯行する事件が地方紙に掲載された。
無銭飲食など どうでもいいだろう、と思うのはこの土地には合わないのである。
たった一人の部下にお願いして連日の張り込みを行った。
もちろん単独である。携帯電話もなし、頼みは110番で心もとないものだった。
この頃7月は(今もそうだが)とても暑い。この町にスーツを着ている者などいない。
それをたよりにパトロールして、一人のグレイの上下の若い男を発見した。
その男が入ったスナックに入った。
よく見ると、その男はすごく汚れていた。かすかな異臭もした。
中年のスナックのママに「今日の新顔は私だけですか?」と言うと、グレイのスーツの男を指差した。
さすがに刑事と気付いた男は逃げた。
逃がさず逮捕というところだったが、必死の馬鹿力か相当に暴れた。
ママも先客のアベックも初めてのことで萎縮していて、
110番してくれと言っても、それはかなわなかった。
仕方ないので、昔の不良のけんか殺法を使って、この場を収めた。
手錠を掛け、飲食代は後払いということで話をつけ、表の公衆電話で110番しているとき振り切って逃走された。
お上からの貸与の手錠なので こちらも必死で追いかけた。
何とか捕まえたところにパトカーではなく、タクシーに乗った部下が駆けつけてくれた。
逮捕手続き書をごまかしたけれども、
署長は、これは一度逃走されたのではないか、と疑問を持ったが不問にふされた。
*******
犯人の男は大企業の社員であったが、馴染めず依願退職した。実家には帰れず、
支店のあるF市で犯行にに及んだものだった。
両親が全店の被害弁償をした。
両親が全店の被害弁償をした。
副検事はこちらの苦労を何とも思わず、笑って起訴猶予にした。
わたしは、そうか。・・と思った。
by hiromu-1946
| 2017-07-14 16:33
| 岡っ引き